人生を変えたのは、出来事ではなく心のレンズだった。 〜安心という土台が、心と体を回復へ導く〜
若い頃なら、一晩眠れば回復していた疲れが、何日経っても抜けない。
そんな変化を感じ始めるのが、40代以降ではないでしょうか。
人生の前半は、「頑張ること」で乗り越えられる場面がたくさんありました。
しかし、人生の後半に差しかかる頃、体は少しずつ変化し始めます。
睡眠の質の変化。
筋力や代謝の低下。
自律神経の揺らぎ。
女性ホルモンの減少。
若い頃のように無理がきかなくなったと感じるのは、決して気のせいではありません。
そして、ここでお話ししたいのが【慢性炎症】という考え方です。
炎症というと、
「熱が出る。」 「腫れる。」 「痛みがある。」
そんなイメージを持つ方が多いでしょう。
しかし、慢性炎症は違います。
体の中で、小さな火種が静かに燃え続けている状態です。
睡眠不足。
栄養の偏り。
運動不足。
内臓脂肪。
そして、長期間続くストレス。
これらが積み重なることで、体は常に緊張した状態となり、
本来備わっている回復する力が少しずつ低下していきます。
眠れない。
疲れが抜けない。
首や肩のこりが続く。
気持ちが落ち込む。
こうした不調も、慢性炎症と関係している可能性があると考えられています。
私が感じる「もう一つの慢性炎症」
ここからは、セラピストとして多くの方と関わってきた私自身の考えです。
私は、心にも慢性炎症があるように感じています。
「本当は苦しい。」「本当は助けてほしい。」
そんな心の声を、何年も置き去りにしてしまうことです。
誰かの役に立ちたい。
期待に応えたい。
迷惑をかけたくない。
その優しさは、本当に素敵なものです。
でも、その優しさの裏側で、一番救うべき自分を後回しにしているとしたら…。
心は少しずつ疲弊し、緊張した状態が当たり前になってしまいます。
心理学では、自分の感情や価値を他者に映し出すことを【投影】といいます。
また、「相手の問題」と「自分の問題」の境界線が曖昧になることを、バウンダリー(境界線)が保てていない状態と考えます。
相手の機嫌まで背負い、 相手の人生まで何とかしようとしてしまう。
その積み重ねが心の緊張を長引かせ、体の回復力にも影響を与えていることがあるのではないかと、私は感じています。
問題を消すことより、自分に戻ること
「問題を解決しなければ。」 そう思うほど、人は問題ばかりを見つめてしまいます。
しかし、心理学には【アクセプタンス(受容)】という考え方があります。
問題を否定するのではなく、 無理に消そうとするのでもなく、 一度、自分の隣に置いてみる。
そして、
「今、私は何を感じている?」
「本当はどうしたい?」
と、自分に問いかけてみるのです。
出来事は変えられなくても、その出来事との関わり方は少しずつ変えていくことができます。
自分が変わると、世界の見え方も変わります。それは世界が変わったのではなく、自分の心のレンズが変わったからなのです。
🌱安心を育てる3つのステップ
① 気付きを「指摘」にしない
人は何かに気付くと、
「また同じことをしてしまった。」
「だから私はダメなんだ。」
と、自分を責めてしまうことがあります。
でも心理学では、「気付くこと(Awareness)」そのものが変化の第一歩だと考えられています。
大切なのは、評価ではなく観察です。
「私は今、不安なんだな。」
「また誰かを優先しているな。」
そう気付けたときこそ、責める材料ではなく、自分を理解する材料にしてほしいのです。
② 気付けた自分を肯定する
溜まり続ける疲れ。
止まらないイライラ。
更年期による不安。
眠れない夜。
理由もなく流れる涙。
それらは、体が何年も送り続けてくれていた大切なメッセージです。
だからこそ、気付いた瞬間は反省する時ではありません。
「やっと気付いてあげられたね。」
そんなふうに、自分へ声をかけてあげてください。
セルフコンパッションでいう【セルフ・カインドネス(Self-Kindness)】とは、自分を責める代わりに、
「つらかったね。」
「よく頑張ってきたね。」
と、自分に優しさを向けること。
その言葉は、心の処方箋になります。
③ 罪悪感を手放す
子どもが傷ついている。
↓
親である私が助けなければ。
↓
思うように助けられず自己嫌悪になる。
↓
苦しむ親の姿を見て、子どもも苦しくなる。
これは、心理学では【バウンダリー(境界線)】にも関わるテーマです。
相手には、相手の人生があります。
自分には、自分の人生があります。
過去の経験から罪悪感を抱えている人ほど、「私が何とかしなければ。」と思いやすくなります。
でも、その優しさが時には、相手から【失敗しながら成長する経験】まで奪ってしまうことがあります。
罪悪感を手放すことは、自分のためだけではありません。
目の前の大切な人が、自分自身の人生を歩く自由を取り戻すことにもつながるのです。
私が「ありがとう」を伝え続ける理由
私は、「ありがとう」という言葉を大切にしています。
誰かに向ける「ありがとう」も素敵です。でも、一番届けてほしい相手は、自分自身です。
「ありがとう」は、今ここにある自分を丸ごと認める感謝の言葉。
答えを探して張り詰めていた心をゆるめ、神経を安心へと導いてくれます。
浅くなっていた呼吸は深まり、体は本来持っている回復する力を少しずつ取り戻していきます。
誰かを幸せにしたいと願うなら、まずは今日、自分自身に「ありがとう」と伝えてみませんか。
その小さな一言が、心と体にくすぶっていた小さな火種をやさしく鎮め、
これからの人生を穏やかに照らす灯りになると、私は信じています。🕯️
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